実際にレッスン内でもチューニングに言及する場面はありますが、口を酸っぱくしてチューナーに頼るなとは言えません。よほどの関心が無い限り、耳で音を取る必要性を感じていない人がほとんどだからです。
しかし楽器を上達したい人やプロを目指す人は、例えチューナーが無い状況でもチューニングが出来るようになって欲しいという願いがあります。
少なからずチューナーから卒業したいという願望を抱いている人も楽器初心者の人も、少しずつ慣れていけば音が合ってるかわかってきますので、チューニングを日課にしてしまいましょう。
一日だいたい10分~25分が目安です。
・1週目 音が”一つになる状態”を見つける
チューニングが出来るかどうかの前に、”音が合っている”という状態を知らないといけません。実はここが難しいところなのですが、まずはチューナーに頼ってとりあえず音を合わせてみます。
次にフレットと音程の関係を利用して”同じ音程”を鳴らします。(例えばギターの2弦5フレットと1弦開放が同じ音です。ウクレレやベースでも2弦5フレットと1弦開放が分かり易いです。)
その時にチューナーをもう一度確認します。どちらもちゃんと合っているのを確認してよく音を聴きます。もし完璧に音程が一致していたら、”1本の音”しか鳴っていないように聴こえます。
逆に少しでもズレていれば2本鳴っているように聴こえます。この感覚を覚えるのが最も大事です。
・あえて”狂わして”また調整する
もし音が完全に一致しているかわからない場合は、どちらかの弦を少しだけ緩めます。ほんとに少しだけです。チューナーも1目盛り動くか動かない程度でいいです。
そこからまた音を鳴らしながら緩めた弦を締めていきましょう。そうすると音程が合わさったタイミングで”1本に響く”瞬間がやってきます。何度も繰り返してこの状態の音を聴きましょう。
ここまででもなかなか苦労するかもしれません。しかし一度覚えれば”音が合っている”ところをすぐに見つけられるようになります。
・2週目 フレットと音程の関係を覚えて合わせる
チューナーを使う時は、開放弦の音名は覚えているはずです。(ギターなら6弦からEADGBE等)
次は”どのフレットとどの弦の開放が同じ音か”を覚えます。普通は1本弦に対して1音覚えればいいですが、応用として1本弦で数箇所覚えても良いです。
丸覚えが苦手な人は1フレットずつ確かめていく方法もあります。ギターの3弦なら開放から順にG、G♯、A、A♯、Bと辿れば、4フレット目が2弦開放と同じだとわかります。
・1本はチューナーで、他の弦は耳で合わせる
音名を覚えたら、どの弦でもいいので1本はチューナーを使って合わせてしまいます。絶対音感保有者でも無い限り、基準となる音はなかなか覚えられないからです。
その1本から他の弦との関係を間違えずにチューニングし終わったら、いったんチューナーで確かめてみましょう。おそらくネックの曲がり具合等で多少はずれているはずです。
もう一度どれか1本をチューナーで合わせ、他の弦は耳で合わせます。3回か4回もすれば全体的な狂いはほぼ無くなっているはずです。

慣れれば音叉も有効的
・フレット音痴は有って普通
この時完璧に調整された楽器なら、どの開放弦もほぼ正しくチューニングできている状態です。しかし多くの楽器は多少ずれています。特に太い弦はずれ易い傾向にあります。
これは”フレット音痴”という状態だからです。フレット楽器は実はとても繊細で、少しでも指の力加減が変わったりフレットの削れ具合が違っていると音程が狂います。
その狂いはほぼ”有るもの”として接するのがフレット楽器です。特にウクレレは大きくずれていても、たいした違和感には繋がらない音に聴こえる楽器です。
しかしずれた状態でコードを弾いたりすると気持ち悪く感じる場合があります。まだこの段階では最終チェックはチューナーに頼ってしまいましょう。
・3週目 ハーモニクスや和音の響きを覚える
弦楽器の奏法の一つに”ナチュラルハーモニクス”という音の出し方があります。ヴァイオリンではフラジオレットという呼び方の音です。
このハーモニクスを用いれば、”弦を押さえなくても違う音程が出せる”ようになります。例えばギターの場合、6弦7フレットのハーモニクスと2弦開放の音が同じ音程になります。(聴こえ方には差があります)
ウクレレだと音量が小さくて利用しにくいですが、ベースではハーモニクスを使って合わせる方が聴き取りやすい音域です。
なのでハーモニクスの位置と音程を覚えれば、よりチューニング時の手が楽になります。
また”フレット音痴”も関係なく、ハーモニクス音と開放弦の音や、ハーモニクス音同士でチューニングすれば全部の開放弦が綺麗に揃います。
逆に弦を押さえた時の”音程ズレ”がそのままだと目立ってしまうので、実際にフレーズやコードを弾いて妥協点を決めていきます。
・和音でも”うなり”を聞き分ける
1週目で”同じ音を鳴らすと1本に聴こえる感覚”を掴んでいれば、和音にも応用できるようになります。
音が少しでもずれていれば、”うなり”という現象が起きます。まるで音量が小さくなったり大きくなったり聴こえる現象です。
同じ音程を鳴らして、微妙に音程がずれていればはっきりわかります。うなりは音程のずれが大きくなるほどわかりにくくなります。(音量変化のスピードが緩やか)
しかし組み合わせる音程を変えていくとまた”うなるポイント”がやってきます。それは”協和音”の響きの時です。とくに完全協和音は顕著です。(和音と音程に関してはこちらの記事に詳しく載っています。)
例えばギターの6弦と5弦の開放弦はそれぞれEとAという音です。一緒に鳴らせば完全四度という響きが生まれます。
この時少しチューニングがずれていれば”うなり”が聴こえます。これを聴こえないように調整すれば音が合っているというわけです。
隣同士の弦の組み合わせだけではなく、例えば5弦と1弦の響きも覚えておくとチューニング時に応用できます。
ここまで出来ればチューニングの速度も精度も、そして妥協点を探すのも十分身に付いています。
・4週目 音楽を聴きながらチューニングする
以上までの項目は、”どれか1本は正しい音に合っている弦がある”という条件が必要でした。しかし目標はチューナーが無くてもチューニングが出来る事なので、もう一つ慣れておきたい事があります。
それは”他の音を頼りに音を合わせる”という技術です。絶対音感があれば頭の中でしっかりと音が鳴らせますが、多くの人は持っていないので他の音を聴く必要があります。
例えば普段聴いている音楽を使う場合は、何でもいいので聴き取り易い音程を把握しておきましょう。
イントロの最初の音がミだとか、歌のサビの途中がソを歌っていると知っていれば、その音を聴きながら弦を合わせられます。
慣れれば聴いた音をその場で覚えます。ずっと覚えるのは難しくても少しの間なら覚えていられるので、頭の中で音を鳴らし続けてそれに合わせて最初の1本をチューニングします。
・自分が弾いて違和感があるか確かめる
チューニングする時に知っている音が周りに鳴っていない場合は、自分で覚えた曲を弾きます。その時に違和感無く弾ければそれで十分ですし、アンサンブルしようと思った時にずれていれば微調整してみればいいのです。
耳を使って”音を聴いて合わせる”という事を繰り返しやっていれば、音感は多少なりとも鍛えられています。弾きなれたコード進行やフレーズは特に耳に残っているはずなので、大きく音程がずれていれば違った音に聴こえるはずです。
自信が無ければチューナーを使ってもいいので、まずは何度でも繰り返し思い出した音を基準にしてチューニングしてみましょう。そうすればいよいよチューナーから卒業できる時がやってきます。