実際にレッスンでも行っているリズムの意味や覚え方、練習の仕方を紹介します。
・リズムは目に見えないから見えるようにする
音楽を聴いているだけで自然と複雑なリズムも刻めれば、後は声や楽器の操作に慣れれば上手な演奏が出来ます。大半の人は単純なリズムなら刻めても、複雑なリズムになると聴き取れなかったり再現できなくなったりします。
その大きな理由は”視覚的に”見えないからです。次にどのタイミングで動作すればいいのかが曖昧になってしまうのです。なのでメトロノームや時計の針のように、”一定間隔で動く”物を見てついていくところから始めれば良いです。
・音符は秒数に変換する
音符は発音の時間配分を記号化したものです。4分音符が1秒なら8分音符は0.5秒、4分音符が0.8秒なら8分音符は0.4秒です。(ここでも以降でも1拍を4分音符で換算するとします。)
この考え方を用いれば、音符の種類と長さの比率を覚えればリズムをきっちり取る事が出来ます。機械的な演奏が良い音楽とは限りませんが基盤となる考え方です。
しかし具体的に0.1秒と0.15秒の違いがわかる程、時間の感覚が研ぎ澄まされている人は少ないです。なのであくまでも、”相対的に”どれくらいの長さの比率になっているのかが理解できる程度で良いでしょう。
最初はメトロノームの速度をBPM=60で慣れると良いでしょう。これは1拍がちょうど1秒の速度です。このテンポに慣れれば、BPM=120やBPM=30にも設定してみます。
倍や半分のテンポに設定しても、頭の中や体の動きでBPM=60を維持し続けられればリズムに慣れてきた証拠です。リズム感をよくする為には他の音に釣られずに、自分の意図したリズムを刻み続けられる事が条件です。
・無音も刻む
休符記号は無音の時間配分を表したものです。休符=休みという考え方は混乱を招きます。音が鳴っていなくてもリズムは止まっていません。休符は”無音の演奏”という意味で覚えましょう。
8分休符なら8分音符と同じ長さですし、16分休符も当然16分音符と同じ長さです。歌いだしのタイミングを合わせられない人は、休符を数えていないからです。
頭の中ではリズムを刻んでいるのに体では音を出さないという技術は意外と難しいですが、身に付くまで練習すれば長い音にも応用できる技術です。
・タイ記号はただの組み合わせ
音楽用語で音価という言葉があります。これは”音の長さ”という意味です。音符をタイで結べば音価が伸びます。
BPM=60の時に4分音符と8分音符をタイで結べば1.5秒という長さになります。このまま音価を覚えてもいいのですが、4分と8分を分けて考えた方がコントロールしやすいです。
休符の時に行ったように頭の中では4分と8分をそれぞれ刻み、実際の発音時は8分は刻み直さずに音を伸ばしたままという状態です。
順番を換えて8分と4分をタイで結んでも1.5秒という長さは同じです。しかしこちらの場合も8分の後に4分も伸ばすと考えた方が正確です。
・付点音符はタイに書き直せばいい
付点4分音符ならBPM=60の時は1.5秒になります。これは付点が付けば1.5倍の長さになるという覚え方で済むのですが、より細かい音符の時に刻みにくくなるでしょう。
なので4分と8分をタイで結んだ状態か、8分を三つタイで結んだ状態を想像すれば正確に刻みやすくなります。特に付点8分は16分を三つ分と覚えた方がわかりやすいです。
しかし楽譜を記入するにも読み取るにも、全てタイ記号で表現されていると雑多で見づらいのです。点一つで音符一つとタイ記号を省略出来るのが便利な理由です。
・3連符は感覚で覚える方が早い
8分は4分の半分、16分は8分の半分という比率の音価ですので秒数でも理解しやすいです。しかし3連符は4分音符を均等に3分割した長さです。BPM=60なら0.33333……と数字では割り切れないので、BPM=180の1拍の長さを覚えてしまえば良いです。
更にややこしいのが2拍3連というリズムです。2分音符を均等に3等分すればいいので、メトロノームの音に惑わされずに2分を意識できれば簡単ですが、たいていの人は4分の刻みに釣られてしまいます。
なのでせわしくなりますが、しっかり3連符を数えて一個飛ばしで発音してやれば2拍3連が正確に刻めます。これもタイ記号の応用になります。
・色々なBPMでも練習しておく
実際の楽曲ではBPM=40より遅いテンポもあればBPM=240より早いテンポもあります。また曲の中でも速度が変化する場合もありますし、人間は機械では無いのでどうしても速度がズレてきます。
それでも違和感なくリズムをキープするには理屈だけでなく、耳や体でしっかりと時間感覚を覚えて合わせられるように練習しておく必要があります。
段々と慣れてくれば曲を聴いた瞬間に拍を刻めるようになり、そこから細かいリズムも想像しコントロール出来るようになっていく事でしょう。