言葉自体は聞いた事が無くても、作曲や編曲でコード進行を考えた時にたまたま転回形が使われている場合があります。
ベーシストがかっこいいベースラインを作った時も、転回形の響きが生まれているパターンもあります。
耳だけの感性を頼りにしてもいいですし、知識を付けて”意図した音”にするのも良い音楽作りの手助けになります。
・コードの転回形とは
コードを鳴らした時に、音程の高さは自由に選べます。例えばCコードなら、低い音からドミソ、ミソド、ソドミという組み合わせでも良いです。
楽器の数が多ければ、ドミドソミ、ミミソドソドなんて組み合わせも出てくるでしょう。
例に出した組み合わせは全てCコードと呼べますが、一番低い音がミならC/EまたはConEと書いてシー オン イーと呼びます。
一番低い音がソならC/GやConGと書きます。
・転回形は一番低い音だけ注目
Cコードの場合、一番低い音がドなら他のドとミとソの音の高さは関係なくCの”基本形”と呼び、一番安定している状態です。
ミ(ドから見て長三度)が一番低い時は”第一転回形”という呼び方で、少し不安定な響きになっています。
ソ(ドから見て完全五度)が一番低い時は”第二転回形”と言い、とても不安定な響きに聴こえます。

低音パートは目立ちにくいが重要
・転回形は不協和音に聴こえる
一つの楽器を使って、ミドソやソドミという組み合わせでCコードを作ってもそれほど不協和音に感じないでしょう。
それは音程が近くまとまっているので、ベースが強く響かないからです。特に高い音域で鳴らせばより違和感は少ないです。
しかし音域が離れていればしっかりと不協和音に聴こえます。
ベースの4弦開放のミを弾いて、ヴァイオリンの2弦のドと1弦のソを組み合わせて弾けば不安定感が増します。
ベースで4弦3フレットのソ、ギターで2弦13フレットのドと1弦12フレットのミを鳴らせばとても濁った響きになります。
特に第二転回形の響きはまるで違うコード(この場合はG)が連想されてしまうような印象を受けます。
・不協和音になる理由は倍音
どうして同じCコードでもベースで響き方が変わるかと言うと、それは倍音が影響しています。
ソという音を鳴らした時、楽器によっては倍音が多く含まれているので、レやシという音階も混ざっています。(厳密には他の音階も混ざっているけれどほぼ聴こえない音量)
この音階はCコードのドやミとぶつかってしまう音です。これが不協和音になる理由です。
つまりどんな組み合わせのコードでも必ずぶつかる音が中に含まれていますが、基本形と転回形では目立つ音程の比率が違うというわけです。
・転回形とテンションコードが等しいパターン
コードには単純な三和音だけでなく、四和音や五和音などもあります。
例えばAm7というコードはラドミソの四和音ですが、C6というコードはドミソラというコードです。
もし一番低い音がラならAm7に聴こえ、ドならC6に聴こえる可能性が高いです。(前後のコード進行にも影響される)
もしソが低い音ならAm/G(Am7/Gも同じ意味)が連想されやすいでしょう。もちろんC6/Gの場合もあります。
もっと突っ込んでみると、ソがベースならGadd9(11th)(13th)(Gアッドナインス イレブンス サーティーンス)という名前のコードにもこじつけ出来ますが、曖昧すぎる響きなので連想しにくいです。
結局はどの音が一番低い音になっていても、何かしらのコードが生まれているのです。
・実際の使い方
転回形を駆使すれば音楽の”緊張感や雰囲気”を変える事が出来ます。
例えばC→G→Cというコード進行の時に基本形のC→G→Cよりも、転回形を混ぜたC/E→G/B→Cの方がはっきり感が弱いです。
C/G→G→C/Gだと全体の雰囲気がGの状態が続いているような印象を受けます。
Am→Am/G→Am/F→Am/Eとすれば、ほとんどの音は動いていないのにコード感が変わっていくような印象が得られ、Am→G/A→F/A→Em/Aなら逆に音の流れが停滞している風にも感じます。
C→F→Dmのベースを細かく動かし、C→C/B→C/B♭→C/A→F/A♭→F/G→F/G♭→F→Dm/E→Dm/E♭→Dm→Dm/C♯と動かせば、全体的に曖昧で濁った響きになります。
・基本形から変えればいい
転回形を用いていきなりコード進行を組み立てるのは難しいので、慣れないうちは全部基本形で作れば良いです。
曲の最初から最後まで基本形だとどうしても単純な印象を受けますが、それがカッコよければ問題ありません。
しかし音の動きが強すぎると感じる場合や滑らかさが欲しい時は、転回形を意識して組み立てるのが曲作りのコツです。