ギターアンプ雑学:増幅部の違いと形状の違い

ギターアンプを選ぶ際の基準は状況により様々ですが、現物を見なくてもスペックからある程度音色の傾向などを判断出来るようになってきます。

エレキギターの音作りは数ある製品の組み合わせから成っています。まずはギターアンプの基礎的な知識をこのページで押さえておくと良いでしょう。

※このページの内容はエレキベースにも共通しています。


・音色の質はバルブステートかソリッドステートかで大きく変わる

アンプは音を大きくする為の機材です。ギターアンプは同時にエレキギターの音を加工する役割も持っています。電気信号の増幅回路に真空管が使われていれば”バルブステート”、トランジスタが使われているば”ソリッドステート”のアンプと呼ばれます。

エレキギターの電圧はとても小さく、そのままの電気信号ではスピーカーを鳴らすパワーはありません。なのでアンプで電気信号を増幅するのですが、その中でも”プリアンプ”と”パワーアンプ”という部分で増幅しています。

・製品名では判断できない

少しややこしいのですが真空管とトランジスタを組み合わせて使っているアンプもあります。バルブステートかソリッドステートかを分類する時は、”パワーアンプ部の増幅にどちらを使っているか”が基準となります。

つまりプリアンプ部に真空管を使ってパワーアンプ部にトランジスタを使えばソリッドステートの仲間になります。(”ハイブリットアンプ”や”プリチューブアンプ”という名称を用いる事もあります。)

パワーアンプでの増幅回路によって音色や演奏の感触が大きく変わり、そして様々な製品でも真空管の感触を再現しようと工夫している点からもバルブステートの方が好まれる傾向があります。

製品の中にはプリチューブアンプなのに(ソリッドステートの仲間)バルブステートという名前が付けられたものもあります。これはチューブの温かさや歪みの厚みをよりイメージさせる為の名称ですので少し混乱してしまいます。

アンプを選ぶ際は実際に出てくる音色や大きさ、その他の機能や利便性を見ればいいのですが、通販で購入する場合は使われている真空管の種類を覚えて判断しないといけません。特にパワーアンプ部が真空管とトランジスタでは同じワット数でも音量がまるで違います。

一般的にはソリッドステートの方が音量調節しやすいので、練習用の小型アンプ等によく使われています。エフェクターそのものの効果もはっきりと反映させ易いです。しかしバルブステートでしか出せない”味”というものがあるので、不便さよりも音色重視で選択される事も多々あります。

バルブステートの傾向

  • 音色作りと音量が深く関わる(音量調整しにくい)
  • 真空管がへたってくれば交換が必要な場合も
  • 真空管交換によって音色を変化させる事が出来る
  • 大きな電圧をかけないと動作しないので電池式は難しい
バルブステート画像

バルブステートアンプの例

ソリッドステートの傾向

  • トランジスタ回路で作れるので小型化しやすい
  • 電池駆動の製品も多い
  • 同じ音色のまま音量調節が出来る(家で練習しやすい)
  • クリアでハイファイな音が出しやすい
ソリッドアンプ画像

ソリッドステートアンプの例

・スタックアンプとコンボアンプ

ギターアンプにはアンプヘッドと呼ばれる形状のものがあります。アンプヘッド単体では音を鳴らす事が出来ませんので、実際に音を出すにはスピーカーやそれを繋ぐ為のケーブルが必要になってきます。このようにアンプヘッドとスピーカーキャビネットを繋いで扱うアンプを”スタックタイプ”や”スタックアンプ”と呼びます。

製品によってはラインアウトと言ってスピーカーを鳴らさなくても直接電気信号を音として変換できる端子を持ったアンプもありますが、やはりエレキギターらしいラウドな音とは違ってしまいますので、特別な状況でない限りは普通にスピーカーから鳴らした方が良い音になります。

音作りの部分とスピーカーが一体になったアンプを”コンボアンプ”や”コンボタイプ”と呼びます。一般的にはこちらの方が練習用などの小型アンプも多いので馴染みが深いでしょう。

コンボアンプの方が直接音も出せて便利なのですが、製品によってはラインナップがスタックアンプだけの場合もありますし、出力の大きなコンボアンプは音量の調整が難しいです。

特にチューブアンプ(=バルブステート)の場合は音量と音色は大きな関わりがありますので、例えワット数が小出力だったとしても良い音で弾こうとすれば近所迷惑になってしまう程です。

同じ名前でスタックタイプとコンボタイプの両方出ている製品もあります。その場合はコンボを表す”C”というアルファベットが付いていたりしますが、仕様はスタックタイプと同じなのに違う名前として販売されているパターンもあります。

・スピーカー交換の可否

もしコンボアンプに使われているスピーカーを変えるには、スピーカーのサイズがアンプ内に収まり固定できるかどうかを見極めなくてはなりません。多少の半田付けの技術も必要になってきます。

狭いスペースで作業しスピーカーコーン(実際に空気を振動させ音を出すための紙の部分)を傷めてしまうと、不要な雑音が混じった音になったり最悪音そのものが鳴らないという事にもなりかねません。

なのでコンボアンプのスピーカー交換はよほど音に拘りがあるか、あるいは探究心が治まらない限りはやらない方が良いでしょう。

スタックアンプは別のスピーカーキャビネットを用意し繋げればいいだけなので、インピーダンスさえ合っていれば簡単に違う音色が楽しめます。

・チューブアンプはスタックタイプが扱いやすい

スタックアンプの場合はスピーカーとの間にパワーアッテネーターという機材を仲介してやれば深夜でも演奏できるぐらいの音量まで絞る事も不可能ではありません。

アイソレーションボックスという機材を用いれば、周りの環境音にも影響されずにレコーディングも可能になります。

スタックアンプの特徴

  • アンプ本体とは別にスピーカー(またはライン入力機材)が必要
  • スピーカーを選びやすい(個数や大きさを場所に合わせられる)
  • 置き方を工夫しやすい(横置き、縦置き等)
  • パワーアッテネーターが使える(チューブアンプの音量調整可能)
スタックアンプ画像

スタックアンプの例

コンボアンプの特徴

  • アンプ単体で使える
  •  スピーカー交換は配線知識が必要
  • アンプの大きさによっては置き場所を取りがち
  • パワーアッテネーターはほぼ使えない(製品によっては内臓されている)
コンボアンプ画像

コンボアンプの例