もちろん音楽は自由な世界です。自分にとってお気に入りの音が出ればどんな種類のギターを使っても良いですが、やはり多くの人が同じような扱い方をするのには理由があるからです。
・アコースティックギター
ギターという楽器を思い浮かべた時、ボディの真ん中にサウンドホールという穴が開いている形がすぐに連想される人も少なくは無いでしょう。
実際にテレビでの露出も多く、路上ライブで弾き語りをしている人もそのほとんどがアコースティックギターを用いています。
アコースティックギター(略してアコギ)という名前で呼ばれるギターの特徴は、
- 金属製の弦6本が基本(12本のタイプも有り)
- サウンドホールと呼ばれる穴が開いている(多くは真ん中に一個、メーカーによっては真ん中以外の位置や側面に穴が開いているものも有り)
- 基本的には電源が無くても使える(エレクトリックアコースティックギター=エレアコのように取り付けマイクで音を増幅したりもできる、エレアコなら穴無しも有り)
- 弦を支える部分は極力金属製以外のパーツが多い
となっています。
実はアコースティックという言葉は電気を使っていない楽器なら全てに当てはまるので、ピアノもヴァイオリンもフルートもアコースティック楽器と呼んでいいですし、後で紹介するクラシックギターやフラメンコギターもアコースティックギターと呼んでも意味は正しいです。
しかし一般的にはアコギと言えば先に上げた特徴を持ったギターを指す場合がほとんどです。
また金属弦を用いているのでスティールギターという呼び方も一応ありますが、全く違う形の弦楽器にもスティールギターという物があるのでアコギに対してそう呼ぶ人は少ないです。

アコースティックギター例 カッタウェイ付モデル

アコースティックギター例 12弦モデル
・アコギに合うジャンル
アコギの特徴として、手軽に演奏できるという点があります。なので電気を使わずに路上や小さな集まりで演奏する時によく用いられます。
ただしメロディー弾きだと音量が小さいので歌の伴奏の為にかき鳴らすのが大半です。静かな場所ではうるさ過ぎずにメロディーが弾けるので、ソロギターもよく弾かれます。
大きな会場や他の楽器とコラボレーションをする時は電気的に音量を増幅しますので、伴奏もメロディーも合わせやすいです。音域的には広めで特に高域がよく響くので、歌の伴奏にもぴったりなのです。
よく扱われるジャンル
- ポップス全般
- 弾き語り
- カントリー
- ソロギター
- ブルース
- ロックやハードロック(静かなパートや伴奏の味付け)
・エレクトリックギター
アコギと同じぐらいか、もしくはそれ以上に露出度の高いのがエレクトリックギター、略してエレキギターです。(更に略してエレキとも)
エレキの発展が音楽ジャンルの開拓、音楽の方向性や機材の発展に繋がったと言っても過言ではありません。
それだけ大衆にとって馴染みの深い楽器なのですが、あまりに種類や形が多く、そして作られる音色も多様化しすぎているのでいまいちどんな音かと想像しにくい人も居ます。
実は私も初めてエレキを買うまで具体的にどんな音なのか認識していませんでした。
エレキは種類が多く音色も多いのでざっくりとだけ説明すると、
- 電気的に音量を増幅しないとほぼ聴こえないのでアンプ等の別の機材が必要(本体に小さなスピーカーが付いている物も有り)
- 機材によって作られる音色は多種多様
- 弦は金属製6本が基本(7本や8本も有り、アコギと同じ12弦タイプも有り)
- 見た目の一番の特徴はピックアップというパーツが付いている(見えない位置に付いているタイプも有り)
- 演奏性の調整用パーツが金属製で手軽に調整できるものが多い
という特徴です。
アコギに比べて本体は重く電気も必要なのですが、機材があれば専用スタジオで無くても良い音でレコーディングできる点や、住宅環境もアコギ程気にする事なく練習できるのが利点です。
好みの問題ですが、一般的にはアコギよりも細い弦が用いられているので、ギター初心者にとっては指の痛さという点からもエレキの方がとっつきやすい印象があります。

エレキギター例 ストラトキャスター

エレキギター例 テレキャスター

エレキギター例 レスポール
・エレキに合うジャンル
作り出せる音色の幅が広いのでどんなジャンルにも対応できますが、音を電気で増幅するのでどうしてもアコースティック楽器よりは音域が狭く感じます。
なので弾き語りやソロギターでエレキを選択する人はまだまだ少ないですが、擬似的にアコギの音をシミュレートする機材もある程なので、決して需要が無いジャンルというわけではありません。
よく扱われるジャンル
- ポップス全般
- ブルース~カントリー~ロック~バラード~メタル
- ジャズ~ソウル~ファンク
- 一部弾き語り(バンドアンサンブルの味付け等)
- インダストリアル系~アンビエンス系等
・クラシックギター
中学校や高校の音楽室にギターが置いてあるところもあります。この場合そのほとんどはクラシックギター(略してクラギ)で間違いないでしょう。
別の呼び方ではナイロンギターやガットギターという言い方があります。どちらも弦の材質での呼び方ですが、今の時代はガット(羊などの動物の腸)製の弦は利便性の点からあまり用いられる事はありません。
見た目は先のアコギと似ていますが、細かい点で見れば古い構造の楽器という事もあり扱いやすさや音色もかなり違う印象のあるギターで、
- アコギよりも比較的小振りなボディ
- 弦は一般的にナイロン製(低音弦は金属線が巻かれている)
- 弦に留め具が無く、直接パーツに巻きつけている
- 音量は小さいがよく通る音
- ネック部がテーパー状になっていない
という特徴があります。
こちらもアコギと同じように、電気で増幅するためのマイクが取り付けられたエレクトリックガットギター(エレガット)という製品もあります。
音色への配慮なのか、立って演奏する為のストラップ取り付けピンすらも付いていない事が多く、一部のジャンルを除いて基本的には椅子に座って演奏するスタイルが主流です。

クラシックギター例
・クラギに合うジャンル
フォークソングが流行る前はギターと言えばクラギが溢れていました。なので古い時代の歌謡曲の伴奏に使われる事が多い印象です。また落ち着いた音色なので演歌でもよく使われています。
和音を弾いてもメロディーを弾いても派手にはなりませんが、中域の密度が濃いので歌声とは違った性質の”声”を出してくれるような音です。
もちろんその名の通りクラシック音楽(ギター独奏曲)で演奏される機会が圧倒的に多いですが、ポップス曲のソロギターアレンジもアコギと同じように行われています。
一部の民族音楽にはヴァイオリンやマンドリンといった弦楽器と共に扱われる場面が多いです。これは古くから伝承されてきた古典的な音楽という面と、電気を用いず手軽に扱えるという面で好まれるのでしょう。
よく扱われるジャンル
- ポップス~ロック(間奏の味付け等)
- 演歌
- ソロギター(主にクラシック)
- トラッド
- 伝統民族音楽
- ジャズ~ボサノバ
・フラメンコギター
見た目や音色の雰囲気はクラギとかなり似ていますし、明確にフラメンコギターというコンセプトでなくクラギと曖昧な製品もあります。
なのでギターそのものというよりは、足を組んで演奏するというスタイルやパーカッシブなサウンドを前面に押し出すという使い方をしていればフラメンコギターと呼んでもおかしくは無いのかもしれません。
しかし求められる音色や演奏の傾向から少しだけクラギと差が付けられています。
- クラギに比べてボディの材質が薄く軽い製品が多い
- ネックの厚みも若干薄めに作られている
- ゴルペ板というボディ保護パーツが取り付けられている製品も有り
- 音もより歯切れがよく立ち上がりが早い印象
これらの特徴からクラギとフラメンコギターを分ける事が出来ます。

フラメンコギター例
・フラメンコギターに合うジャンル
基本的な音色はクラギと似通っているので合うジャンルも同じでいいのですが、歯切れの良さや演奏テクニックを前面に押し出したスタイルから歌モノよりもインスト系に使われている傾向が多いです。
アコギでもパーカッション主体の演奏が行われたりしますが、フラメンコギターの方がより甲高く素早い印象の音なので”ノリ”を作る音楽で好まれやすいです。
よく扱われるジャンル
- フラメンコ
- ラテン音楽
- インスト系
・リゾネーターギター
ボディの表面に金属板が取り付けられているギターがあります。
ポップスなどではあまり見かける事はありませんが意外と歴史が古く、電気を使わずに音量を増幅する為に考案されたものです。
今では音量を稼ぐ為というより、独特な音色を出す為に用いるという印象が強い楽器です。
主な特徴として、
- サウンドホールの代わりに派手な金属板が装着されている
- ボディ全体も木製でなく金属製の製品も有る
- レゾナンス成分(おおよそ800~1000Hz)の音域が強く出る印象
というのが普通のアコギとの違いと言えるでしょう。
リゾネーター(リゾネイターやレゾネーターなどとも表記される場合も)ギターという名前以外にも、ドブロギターという名で呼ばれる事があります。
ドブロというのはギターのメーカー(ブランド)の一つです。

リゾネーターギター例
リゾネーターギターに合うジャンル
主に使われるのはブルースの特にスライドギターと呼ばれる奏法です。
その音色はハワイアンにもよく使われます。
エレキギターが開発されるまではジャズバンドの中でも埋もれないようにする意図がありましたが、特別この音が欲しい理由が無い限りあまり使われません。
楽器単体なら歌モノの伴奏、アンサンブルならソロで存在感を発揮できるでしょう。
よく扱われるジャンル
- ブルース
- カントリー
- ハワイアン
- 一部インストルメンタル