日本民謡の特徴を音楽理論を使って解説

民謡、特に日本民謡は一部の唄を除いては単純な音階が用いられており歌いやすい旋律です。

このページでは”民謡風”メロディーの特徴を並べます。

その特徴を把握すれば簡単で聴き心地のいいメロディーが作れるでしょう。


・古今東西の共通音階

真っ先に思い浮かべる特徴は”ペンタトニックスケール”と呼ばれる音階です。

どの時代のどの地域にでも使われている音階ですが、曲によって多少音の組み合わせが変わります。

基本的には”メジャーペンタトニック”と”マイナーペンタトニック”です。

民謡イメージ画像

・メジャーペンタトニック

ドレミファソラシド(=Cメジャースケール)と順に歌えば長音階と呼ばれ明るい印象の音並びになります。

ペンタは”5”という意味なので7種類あった音を5種類抜粋しますが、Cメジャーペンタの場合はドレミソラの5音階です。

メジャースケールから4度と7度(Cメジャーならファとシ)を抜くので四七抜き(よなぬき)と呼ばれます。

・マイナーペンタトニック

こちらも5音階ですが、ラドレミソ(=Aマイナーペンタトニック)がよく出てきます。

メジャーペンタトニックと同じ音の組み合わせですが、強調する音、中心となる音によって明るさが薄れて聴こえます。

こちらはマイナースケールの二六抜きの音階です。

・その他の音階

5音階でも”音の抜き方”で違うスケールになります。

メジャースケールの二六抜き(Cメジャーならドミファソシ)なら沖縄民謡によく使われる音階です。

マイナースケールの四七抜き(Aマイナーならラシドミファ)は演歌にもよく取り入れられている音階ですが、民謡にもよく使われています。

メジャーの三七抜き(ドレファソラ)もよく見かけます。

5音階では無く6音階の曲も多くあります。

メジャーの七抜き(ドレミファソラ)や四抜き(ドレミソラシ)に六抜き(ドレミファソシ)、マイナーの四抜き(ラシドミファソ)で構成された曲もあります。

これらのスケールには特別な名前は付いていませんが、昔の人たちにとって親しまれた響きだったのでしょう。

・変化音もたまに使われる

頻度としてはそこまで多くありませんが、メジャーの響きとマイナーの響きを混在させている曲もあります。

その時は3度と6度の半音下げが使われますが、正確な半音というよりは”少し低めに歌う”というニュアンスでしょう。

・始まりと終わりの音階

日本民謡の面白い特徴として、2度や6度の音階で〆る曲が多い事があげられます。

歌い出しの音階は歌謡曲にも多い1度や5度始まりが多いですが、他の音階からの出だしも頻繁にあります。

終わりの音階はメジャーでは1度よりも2度や6度、マイナーでは1度や2度の頻度が多い印象です。

しかしメジャーの6度とマイナーの1度は同じ音階なので、特にペンタの場合はキーの判断が曖昧なのが実際です。

・音色や独特な発音

音符を並べただけでは他のジャンルと区別が付かないメロディーも多くあります。

しかし例え普通のメジャーペンタトニックでも、歌い方や弾き方で民謡らしさを演出出来ます。

楽器なら三味線や琴、尺八の音色を聴けば”日本的”に聴こえてしまいます。

歌の場合は”ビブラートをかけない”のが必須な地域もあります。

ただし発音時は装飾音的に音程を上下される音も多いです。(”こぶし”という名で表現される事も)

・母音の伸ばしも多い

曲によっては1音に対して1語もありますが、1語を伸ばして上下させる方がより”民謡らしい”印象を与えてくれます。

主に西洋音楽理論的な観点から特徴を述べてきましたが、結局は”詩の持つ背景を知る”のが最も民謡らしくする要素なのかもしれません。