特定のジャンルに限らず登場人物の心理描写を表したり、これから何かが起こりそうという雰囲気を醸し出すにも不安感を演出する音というものがあります。
効果音や楽曲の中のフレーズで、実際に”不気味さ”を出す為の方法をご紹介します。
・不気味と感じる理由
不気味な音、不快な音を作るには何故そう感じるのかを知っておくほうが良いです。
まず人間の心理の一つとして”恐怖”という心理があります。恐怖を感じる理由の大きなものの一つに”生命を脅かす状況”があります。
重たい物が頭上に急に落ちてきたり、制御の出来ない大量の炎に包まれれば正常な判断を失う程に恐怖で支配されます。
これは明らかに怪我や死に直面している瞬間なので、”見える恐怖”というわけです。
・未知から来る恐怖
もう一つの恐怖の理由として”未知”が挙げられます。
未知は全てが怖いと感じるパターンだけではなく、”好奇心の対象”として魅力に映る事もあります。
しかし”得たいの知れないモノ”という言い方がされる場面はそれは恐怖とリンクするのです。
未知もたどっていけば、”生命を脅かすかどうか”が肝になっているので、絶対に安心出来るとわかってしまえば怖さは半減するか無くなります。
不気味な音を作るには、この”得たいの知れない”という部分を強調してやれば良いのです。
もちろん実際に音楽で死ぬ事はありませんので、あくまで擬似的に気持ち悪さを演出します。

はっきりわかれば全く怖くない
・過去の記憶とリンク
上記の理由は一般的に当てはまる理由ですが、個人にだけ対して恐怖を感じさせるものがあります。
それはその人が経験した”恐い体験”と深く結びついているものです。
映画でも使われる手法の一つに、”とても明るい音楽なのに不穏な流れ”というシーンがあります。
ギャップ効果として強いインパクトを与えるという手法ですが、例えば”登場人物が襲われた時に明るい曲のレコードが鳴っている”という場面を見た事がある人が居たとします。
そうすると、”日常で明るい音楽を聴いてる=突然の脅威に襲われる”、という連想が出来上がります。
得たいの知れない音でなくても、普通の明るい曲を怖い音として演出できる事もあるのです。
・音の作り方
ここから実際にどうすれば不気味な音を作れるか解説していきます。
1.使う音域
まずどんな楽器でも、出せる音域があります。その音域内の一番低い音と高い音の付近でフレーズを作れば不気味さに繋がる事があります。
弦楽器なら極端に弦を緩める等すればより低い音が出せます。
”何を弾いてるのかはっきりわからない”というぐらいでも構いません。録音したデータを無理矢理低い音や高い音にするのも効果的です。
2.使う音階
不協和音を多様するのが一番楽な方法です。特に増四度・減五度の響きは”悪魔の響き”とまで言われていたぐらいです。
ただしはっきりと”Cメジャースケールとわかる”というような音運びはあまり不気味さを感じません。
変化音を取り入れ調性感が曖昧になる方が気味の悪さは強くなります。また半音よりも更に細かい幅の音程も不安感を誘い易いです。
3.断続性の薄いリズム
簡単に言ってしまえば”ノリにくいリズム”です。どのタイミングで次の音が来るのか想像できないリズムは不快になりやすいです。
4.反復が多すぎるリズム
先とは逆に、しっかりと一定の間隔を保ちリズムを刻んでいても、それがあまりにも繰り返しすぎるといつ終わるのかという不安感がやってきます。
5.意図的なノイズを入れる
機械的に作り出したノイズでも良いですし、楽器や声でもノイズは作れます。ポイントは”音程感がはっきりせずどうやって出している音か想像しにくい”という点です。
6.音量の操作
極端に小さい音や大きい音、予想の付かない急な音量差は非常に不快に感じるものです。
ビックリ系の演出でも、静かになったところにいきなり叫び声を鳴らすというのが王道パターンです。
またデジタルで”音の逆再生”というのが可能です。普通の楽器の音では無いの種類によってはとても気味の悪いになります。
7.定位の調整
定位というは音が鳴っている位置の事です。
ヘッドホンやイヤホンで聴く場合とスピーカーから聴く場合とでは効果に差がありますが、左右を素早く振り分ければ気持ち悪くなるぐらいになります。
先の音量の操作と組合せれば不気味どころか実際に酔ってしまう程の効果もあります。やりすぎには注意しましょう。
以上7つの項目を用いれば”不気味な音”作りは上手くいく事でしょう。
実際の楽曲の中で使うのは難しいですが、インパクトが出れば曲の印象そのものが強くなってくれる場合もあります。
少し変わった曲を作りたいという時に試行錯誤してみるのも面白いかもしれません。