打ち込み音源やライン録り(楽器を直接機材に接続して録音)ならクリアで鮮明な音質で録音する事も簡単となります。
しかし楽器によっては”空気を通した生の音”が魅力的であったり、人の声のようにライン入力出来ない状況もあります。
ここで必要となってくるのがマイキングですが、同じマイクでも少し位置や角度を変えるだけで音質は大きく変わります。
一番”良い音”がどこかを探すだけで何時間も費やしてしまうのも珍しくありませんが、ある程度基準を設けておけば狙う音を見つけやすいです。
このページではマイキングのポイントを簡単に解説していきます。
・基本はピーク部分を意識
まずは適当にマイクを置いて録音してみましょう。
楽器や声がどの程度の帯域を含んだ音なのかをチェックします。
フレーズによっても変わりますが、”一番音量が大きくなる帯域”がピークです。
個体差によりますがベースなら100~200Hz、ヴァイオりンなら400~600Hz付近にピークがあります。
このピークを一番拾えるマイク位置を見つければ、クリアで音圧感のある音が狙えます。
・遅延成分の有無
マイクで録音するという事はライン入力と違って必ず”音源とマイクの距離”があります。
わざと残響効果を得る為の”オフマイク”というセッティングもありますが、クリアに録音するにはなるべくマイクを近づける”オンマイク”というセッティングにします。
近づけすぎるとマイクに接触してしまいますし、大きい楽器だとピーク位置も狙えなくなってしまうのである程度の距離は取る事になります。
しかしここで遅延音の問題が発生します。
音には速度がありますが、帯域によって速度が変わるという性質があります。
なので音源の音とマイクに届いた音が合わさって不自然に増幅されたり相殺されたりします。
これがマイク位置や角度による音質変化の原因の一つです。
理想はなるべくバランスよく”同時に”音が届く場所ですが、目には見えないので”なるべく耳で聴いたままの音”が拾える場所を探します。
・ノイズが乗りにくいように注意
ピーク部分を狙った時と、遅延音の違和感が少ない部分を狙った時とを比べてマイク位置を決めてもいいです。
しかしもう一つ注意したいのはノイズ成分です。
一つのパートだけを聴いて違和感がなくても、他のパートとバランスを取ったりイコライザーで増幅するとノイズ成分が邪魔になったりする事があります。
その時はまたマイク位置を変えて、”他の楽器に埋もれない音”を探す事になります。
つまりミキシングをする前にある程度マイクで帯域を決めてしまうわけです。
多少ピークが外れてしまっても、楽曲全体で埋もれない事の方がクリアに聴こえ易くなります。
ただし録り直しが出来ない状況も生録音には付き物です。
なので予め複数のマイクを用意して(出来れば種類も違う物を)それぞれ別トラックで録音しておくのが一番手っ取り早い方法だったりします。
参考としてマイク位置の違いによる波形変化の画像をご覧下さい。
ノイズ成分は限りなく小さくても増幅すると目立つことがあります。
もし2kHz付近がもっと必要な時はイコライザーの調整よりマイク位置で調整した方が良いです。
マイキング一つだけでも本一冊になる程の内容ですが、簡単にポイントを掴むだけでも時間短縮に繋がるでしょう。