その理由は楽器数の多さと音の性質です。
楽曲全体の迫力を上げる為にはコンプレッサーをかけるのが一般的です。
しかしドラムの瞬間的なアタック音で圧縮されすぎてしまい、結果的に曲全体の音も聞き苦しくなる事も多いです。
ハードロックやヘヴィメタルといったジャンルではドラムが派手なミキシングがかっこよく聴こえる傾向にあるので、ますます音圧とのバランスが難しくなる楽器です。
このページでは主にDTMでのドラムセットのまとめ方による違いや、迫力の付け方を解説していきます。
生ドラムの知識にも多少は触れておけばよりイメージがつきやすくなるでしょう。
・生ドラムセットのおおまかな楽器
DTMだけでドラムを打ち込み始めると、初心者のうちは「腕が3本無いと叩けない」だとか、「あまりに音の種類が多すぎる」といった経験もあるでしょう。
調べれば一般的な配置はすぐにわかりますが、1つ1つの楽器にも奏法によって音の種類は増やせます。
なのでだいたい10種類程の音色もあれば十分でしょう。
楽器を簡単にまとめると、
- バスドラム(キック)
- スネアドラム
- クラッシュシンバル
- ハイハット
- ライドシンバル
- タム
- その他シンバル系(チャイナシンバルなど)
が主にポップスやロックで使われる楽器です。

・発音の種類はより多くなる
クラッシュシンバルやタムは違う音の物を複数並べるのも一般的です。
また同じ楽器でも、演奏法の違い(叩く場所や叩き方)によって音色の種類は増えます。
かと言って音色を多用しすぎても雑多になったりバランス調整が面倒になるので、10種類程度に抑えておきましょう。
・マイキングとトラック数の関係
生楽器のマイク録りはどれも大変ですが、特にドラムセットは苦労が大きいです。
マイク1本だけだと音量バランスや残響の調整が取れないだけでなくモノラルになってしまいます。
2本だと自然な感じには収録しやすいですが、より各楽器を際立たせる為には最低限のマイクを用意しないといけません。
マイクも楽器の特性に合わせて違うタイプの物を使ったり、残響は別のマイクで収録したりと拘りだしたらキリがありません。
・注意点は音の種類とトラック数
マイクの数だけトラック数が増えてしまうのも編集が大変になる要因ですが、打ち込みの場合も演奏法による音の違いを把握しておく必要があります。
ハイハットのオープンやクローズが左右別々に聴こえるようにトラックをわけてしまうと、少し音楽をかじっている人にとっては違和感になってしまうからです。
慣れないうちはむやみにトラック数を分けずに、ソフトウェア音源にプリセットされているままのセッティングが無難です。
マイクの位置に悩まなくて済むのもDTMの利点です。
・コンプレッサーのかけ方による違い
実際に迫力を出す為にまず思いつくのはコンプレッサーをかける事です。
もちろん逆効果となるパターンもありますが、基本的にはアタックがより鋭くメリハリを出せたり、余韻を伸ばして空間を埋める事も出来ます。
ジャズなどのジャンルによっては”小さい音”も多用するのであまりコンプレッサーはかけない方がダイナミクスが利いて躍動的になる場合もあります。
・全てまとめてか楽器別か
コンプレッサーをかける時に注意したいのが、トラック数です。
ドラムセットとしてまとめてエフェクトをかけるのが一番楽ですが、そうすると「スネアを叩いた時にキックやシンバルが弱くなる」といった聴こえ方になってしまいがちです。
かといって楽器別に分けてエフェクトをかけると、ソフトの処理が重くなるだけでなく”思った程際立たない”という状態になったりもします。
経験的には、
- バスドラム
- スネアドラム
- タムセット
- シンバル系
の4トラック程にまとめてコンプレッサーをかければバランスがとり易いと感じられます。
タムとシンバルをまとめて3トラックにしたり、全く違う音色がある時は5トラックにしたりもします。
色々試していくうちに手間と効果の割合を見つけていけるでしょう。
・パンニングと残響の大きさ
迫力あるドラムに聴かせる工夫としてパンニングと残響があります。
例えばクラッシュシンバルやタムを極端に左右に分けたり、スネアの定位も中央から少しだけずらしたりすればモノラル感が薄れより派手に聴こえます。
音色がモノラルでもリヴァーブで擬似的にステレオにしたり、余韻を伸ばして空間を埋めれば壮大な演奏に聴こえます。
ただしリヴァーブもコンプレッサーと同じで、ドラムセットとしてまとめてかけるのか、楽器別にかけるかでイメージが変わってきます。
またドラムだけ迫力がありすぎてしまっても曲全体のバランス崩れてしまうと意味がありません。
”曲そのものが良く聴こえる”のが第一目的だというのを忘れないように調整を心がけましょう。