ピックの種類は非常に多くまた持ち方も千差万別なので、著名なプレイヤーも求める音や演奏性を模索し続ける程です。
楽器を始めたばかりの人はもちろん、違うスタイルを試したい人もピックを色々使ってみると新しい発見があります。
このページではオーソドックスなピックの種類と持ち方について解説します。
・ピックの種類とその違い
選ぶ際のポイントは5つあります。
1.形状の違い
すぐにわかる違いは形や大きさです。主に2種類の形状が一般的です。後の3種類は使う人を選びます。
- ティアドロップ型:オーソドックスな形状。基本的には尖った方で弾きます。音色を変える為に反対側で弾く事もあります。特に拘りが無ければ無難に扱えます。
- トライアングル型:こちらもよく使われます。三カ所が同じように尖っているので削れてきた時に持ち変えれば新品の弾き心地が得られます。摩擦面積が広くなりがちなので、アタック音(弦とこすれる音)が強調される傾向です。
- ジャズ型:ティアドロップ型の先端をより鋭角にし、全体的に小ぶりにした印象の形状です。反対側は丸みを帯びていたり、角が立っていたりと様々です。
- ホームベース型:先端はジャズ型のように鋭角が多いですが角度は少し広めです。機能的にはトライアングル型の弾き加減とティアドロップの持ちやすさを合わせたイメージです。
- サムピック:これは摘まんで持つのではなく、親指にはめて使います。指からピックの先までの距離は削れない限り一定に保てます。指の太さは人それぞれなので、熱を加えて調整してフィットさせるやり方もあります。
2.厚みの違い
どのピックも様々な厚みで作られています。薄めのピックの特徴は
- しなりやすい(弦に平行に当てれば力負けしにくい)
- 高域がよく通る音色で鳴らしやすい
- 弦に対して斜めに当てると引っかかりやすい
- ピックそのものが割れやすい
- 音量にまとまりが出やすい(極端な強弱を表現しにくい)
という傾向にあります。
厚めのピックの特徴は
- 力加減を直接伝えやすい
- ピックを持つ力が弱いと落としやすい
- 斜めに当てても滑りがいい(先端の形状の影響の方が大きい)
- 中域の密度が濃い音色で鳴らしやすい
と言えます。同じような厚みでも材質や形状の違いの影響を強く受けます。
どの厚みがいいか悩んでしまうなら0.75mm~0.8mmの厚みの物から慣れると良いです。
それより薄ければ薄め、厚ければ厚めという感覚です。
3.材質の違い
ピックのそのほとんどはプラスチック(人工樹脂)で出来ています。
プラスチックと言っても非常に種類が多く、製品説明に材質も表記されている場合もありますが、名称を覚えるよりは触った時の感触や使い心地で選べば良いです。
材質による主な違いとして、
- 持った時の滑りやすさ
- 削れやすさ
- しなりやすさ
- 音色
といった点ですが、滑りやすさ以外は形や厚みも含めての違いなので、あまり気にする必要はありません。
プラスチック以外にも金属製の物もありますが、総じて弾きにくいので初心者向けとは言えません。
4.値段の違い
ピックの相場は税抜き70~100円と思っておけば良いです。20円程度の物や数万円の物もありますがあまり見かけません。
値段と音色は一切比例しないので気にする必要は特にありません。
5.見た目の違い
形とは別に、描かれている絵や材質による色味の違いがあります。
演奏性には直接影響しませんが、好きな絵柄があればそれで選んでも良いです。
オススメは白系です。透明の物や黒の物よりも、机や椅子の下に落としてしまった場合見つけやすいからです。
・基準のピック
以上の違いを踏まえた上で、初心者の方やピック選びに迷っている方に”基準として”使って欲しいピックは、
- 形状はティアドロップ型
- 厚みは0.75~0.8mm
- 材質はセルロイドかデルリン(両方とも安価だけれど耐久性はデルリンが上)
という特徴を持った製品です。
自分の中の基準ピックを作れれば他のピックも比較しやすくなります。一つ慣れてしまえばたいていのピックも扱えるようになっていくのです。
・ピックを持つ時の支点を意識
ピックは種類だけでなく、持ち方でも演奏性や音色が変わります。
指の長さや太さが人それぞれ違うので、一番しっくりくる持ち方というのも人それぞれですが、”どの点で支えるか”だけ意識しておけば違和感なく持つのに慣れていくでしょう。
1.親指の支点
基本的にピックは親指と人差し指でつまみます。まずは親指とピックの位置関係を意識すると良いです。
ピックの先端(弦に当てる部分)の角度は親指に対して直角にします。先が丸めのピックなら曖昧な少し外向きでも問題ありません。
位置は爪の真ん中から第一関節の手前までが安定させ易いです。
柔らかく弾きたい時や細かく弾きたい時は先の方で、しっかりピックを保持したい時は関節付近で持ちましょう。
2.人差し指の支点
人差し指はピックを支える点が、指の側面か、指先か、指の腹か、それらの間の位置かがあります。
- 指の側面:可もなく不可もなくといった持ち方です。指の爪が少し伸びていてもあまり影響ありません。強く持ちすぎると爪に当たって痛くなる事があります。
- 指先:爪が短くないと出来ない持ち方です。細かい動きに対応しやすいですが、保持力が弱めなのでストロークというよりは単音弾きに向いています。
- 指の腹:これも爪が邪魔になりにくい持ち方です。ピックの材質によっては滑って回転しやすいのでこちらも単音弾きで扱う方が良いでしょう。
一つの持ち方を曲中ずっと保持し続けてもいいですが、フレーズや音色に合わせて柔軟に持ち変えるのもテクニックです。
どの持ち方でも、ピックがずれた時に持ち直せるようになれるまでは時間がかかります。まずは一つのスタイルを続けてみましょう。
3.その他の指
親指と人差し指以外はあまり力を入れず、自然に曲がった状態で構いません。
最初はピックを落とさないように力が入るので、他の指もつられて丸まっても問題ありません。ただし握り込みすぎると手首が硬くなってしまいます。脱力が基本です。
ピックが体の一部になるぐらいに慣れるには、数年かかっても遅くはありません。一番しっくりくる持ち方を見つけてくれるのは練習なのです。