音圧と音の密度との関係、波形データでの確認方法

音楽制作では”音圧”を高めに仕上げるのが良しとされる風潮にあります。

ジャンルによっては大きい音から小さい音まで表現する為に、曲全体の音圧が抑えられる事もあります。

しかし音楽以外の環境音(雑音)が鳴っている場所で聞き流す場合は、音圧が低すぎる部分があると聞きとれなくなります。

また大きい音の方が迫力があるので”目立つ”という面もあります。

音圧を上げる為にはコンプレッサーなどのエフェクターを使うだけでは無く、”音の密度”も考慮すればよりミキシングやマスタリングの方向性も見えてくるでしょう。

このページでは音圧と音の密度についての関係性を述べていきます。


・音圧と音量の違い

音楽では音圧という言葉がよく使われますが、いまいち音量との違いがはっきりしにくい言葉です。

簡単に言ってしまえば音圧とは”音のエネルギー量”の事です。

物理で例えるなら、「質量と重さ」の関係と思っておけば間違いはないでしょう。

  • 音圧が高い=音を鳴らす(空気を振動させる)為の力が強い状態
  • 音量が大きい=実際に耳に聞こえる音(空気が振動している大きさ)が大きい状態

と考えられます。

音圧が高くても、距離が遠かったりスピーカーが小さければ聞こえてくる音量は小さくなります。

音圧が低くても、耳によく届く音なら音量は大きく聞こえます。

・音圧が小さすぎるのは良くない

音源データに記録されている音圧に関係なく、音の大きさは再生機器のボリュームで調整すれば済みます。

しかしあまりに音圧が小さすぎると、ボリュームを上げてもまともに聞こえない場合があります。

またボリュームを上げれば、再生機器そのものから発生してしまうノイズも一緒に増幅されてしまいます。

つまり良い音で再生する為には、最低限の音圧が必要という事です。

 ・音の密度によって音量は違う

音の密度という言い方はこのページで作った言い方です。

違う表現をするなら、「同時に鳴っている周波数帯域の総量」といったニュアンスになります。

例えばホワイトノイズは低い音から高い音まで万遍なく密度が濃い状態で非常にうるさい音です。

逆にデジタルで10Hz付近だけの音を作った場合、全体の音圧をいくらあげても音の密度は少ないままです。

・波形画像で比較

波形データ

低い音域が中心に鳴っている波形データ

波形データ

高い音域まで鳴っている波形データ

上図2つはソフトで作った音声の波形データです。

1つ目は低い音域が中心に鳴っていますが、3kHzより高い音は皆無です。

2つ目は先の音声に中域から高域の音を足した音です。

明らかに密度は2つ目の方が濃いのですが、全体の最大音圧で比べれば1つ目の方が僅かに大きくなっています。

実際に耳に聞こえてくる音は2つ目の方がうるさく聞こえてきます。

・音圧を更に上げたい場合

コンプレッサーなどを使っても、いまいち曲全体の音圧が物足りない時は波形で確認してみると良いです。

特にパーカッション部分が瞬間的に大きい音になるので、どの周波数が鳴っているかを見分けて他の楽器とかぶらないように音作りし直します。

上図の2つ目を例にとると、800Hzと1200Hzと1600Hzを少し抑え気味にすれば、300Hzより高い音を全体的に持ち上げられるようになります。

もちろん時間的に音は変化するので、極端に大きいパートを探す事になります。

曲の最初から最後までびっしりと密度が濃い音源は迫力がありますが、”耳で聴いて”うるさすぎないようにするのも忘れないでおきましょう。