電子楽器が登場してからは、生楽器・生演奏では聴く事の出来ないサウンドやフレーズも表現する事が可能になりました。
そこで開拓されてきたジャンルが、”エレクトロ”や”インダストリアル”といったようなジャンルです。
DTMの分野では「如何に人間が演奏しているように打ち込めるか」という点もテクニックの一つとして必要です。
しかし逆に「如何に人間っぽさを出さずに機械らしさに徹するか」というのも音楽表現の一つとなりました。
そこから派生して、「生演奏でどれだけ機械らしく演奏できるか」という試みも見られてきました。
多くの演奏スタイルを経験して、更に新しい可能性も開拓したいと考えている方は一度”機械的な表現”にも目を向けてみると良いでしょう。
・音声加工による機械っぽさの表現
生演奏でも機械っぽく表現するのに一番手っ取り早いのは、エフェクトを用いる事です。
アンプやマイクに直接エフェクターを接続してしまえばそれだけで”変わったサウンド”を作るのは簡単ですが欠点があります。
それは「誰が演奏しても似たような響きに聴こえてしまう」という点です。
例え機械っぽさを表現しているとしても、そこに個性がなければ残念ながら有象無象となってしまいます。
アーティストとして活躍する為にはそこに何としても個性を出さなければなりません。
・テクニックでのみの機械的表現
そこで必要となるのが演奏テクニックです。
簡単なフレーズも難しいフレーズも安定してぶれる事の無い演奏が出来るように練習するのは、普通の音楽でも同じです。
機械っぽさを加えるには3つの要素を徹底しなければなりません。
1.ダイナミクスのコントロール
まず必要となるのがダイナミクス(音量や発音時の音色)です。
上手いと思わせる官能的な演奏でももちろんコントロールしなければならない要素ですが、機械的に如何に”均一に”演奏するかという点も非常に難しいものです。
一瞬でも力加減がぶれてしまえば人間臭くなってしまうからです。
2.リズムの極端なまでの制御
テクニカルな面を売りにしている演奏家ならこの点は自然と出来てしまっているでしょうが、よりシビアに、よりメリハリを付けてリズムを制御しなければなりません。
特に”休符に対するアプローチ”で顕著に違いが出るのが音楽です。
音を切る時に”一切の余韻が残らないぐらい瞬間的に徹底的に無音を作り上げる”のはとても難しいことなのです。
3.ぶれない(つられない)ピッチ感覚
人間に出来て機械(自動演奏)にはまだ出来ない事があります。
それは臨機応変なピッチ(音程)の調整です。
生演奏の場合はその場の楽器の状態やアンサンブル時の周りの音に合わせて、多少ピッチを調整しながら調和感を大事にして演奏しています。
電子楽器以外はどうしても温度や湿度といった影響でピッチがぶれてしまうのも音楽の魅力とも言えます。
しかし機械的な演奏は例え自分のピッチが浮いて聴こえてしまっても、お構いなしに一度決めたピッチを徹底して出し続ける事になります。
時として「打ち込みが音痴に聴こえてしまう」のにはそういった理由もあったりするのです。
・難しさの割りに成果が出にくい
機械的な演奏を目指すのはある意味とても難しいのですが、実はそこまではっきりとわかってくれる人が少ないのも事実です。
何故なら「機械(自動演奏)で既に表現出来てしまっている」からです。
しかしあくまでも”人がそれを表現している”という面が新しい価値を生み出したり、新しいサウンドを生み出したりする可能性も否定できません。
もしも個性が出せずに伸び悩んでいる場合や、ありきたりな演奏表現に飽きている場合は”機械化してみる”のも新しい道筋のきっかけになる事でしょう。