音作りの基本、音色の違いを理解する

人の声が皆それぞれ違うように、楽器の音も種類や個体で違う音色を奏でます。音は目に見えないので、仕組みを理解するのは難しいです。しかしおおまかな知識を入れておけば、心地良さを見つけるヒントになります。

また同じ楽曲でも、歌う人が変われば雰囲気はガラっと変わります。同じように楽器を変えてみるだけでも、全く違うアレンジに聴こえたりするものです。つまり同じ曲でも”無数の表現”が出来るというわけです。

・音そのものは多数の空気の振動

物理を勉強すればわかる内容ですが、そんな面倒な事を考える必要性は一般的には無いでしょう。音の正体を簡単に説明すると、空気の振動、言い換えれば”風”みたいなものです。

試しに自分の手や団扇等を左右に振ってみると、風が起こります。人間の手で動かせる早さだと音程は聴こえてきません。

もし1秒間に100回や500回や10000回と自在に動かせたら、色んな高さの音程を出せるようになります。


・音色の違いは空気の動き方の違い

空気を左右に動かすだけでも、

  • 規則的で止まらず滑らかな動き
  • 速度や移動幅は一定では無いが周期性はある動き
  • 完全にランダムな動き

とおおまかにわける事が出来ます。この違いで音色に差が出たり、音程感の無いただのノイズになったりするわけです。

以上の二つの項目は物理的に見た音を簡単に説明したものです。ここからは音楽的に音を捉えた時の違いを説明していきます。

波形画像

波形の例。瞬間的に空気圧がかかる動き。

・単音でも和音になっている

単音というのは一つの音程を出した時の響きです。例えば音名で表すとドとかファ♯とかです。和音というのは二つ以上の音程を出した時の響きです。DコードとかGm7コードとかです。

実は単音というのは、一部の音を除いて和音になっています。ピアノを複数用意して、それぞれ同じ高さのドを鳴らしてみても、微妙に音色が違って聴こえるはずです。

これは”倍音”と呼ばれる成分の影響です。ドを鳴らした時に、実はそれよりも高いミとかソとかレとかシとか色々混ざっているのが楽器の音や人の声です。

この混ざり具合は複雑ですし、音量にも差があります。なのでドが一番大きく聴こえればドという音程に聴こえますが、もしもミの成分が強すぎればミに聴こえてしまう場合もあります。

倍音の混ざり方は電子楽器以外はコントロール出来ません。楽器そのもの、物体そのものが持っている”固有振動数”の影響を受けてしまうからです。

固有振動数というのは物が持っている共鳴のし易さです。色んな物を叩いた時の音の違いを生み出す要因にもなっています。

・澄んだ音と濁った音

和音では一緒にならした音程によって協和音や不協和音になります。これは単音にも同じ事が当てはまります。倍音の混ざり方で、協和音の割合が多ければ澄んだ音に聴こえます。

例えばフルートの音色やギターのハーモニクス音等です。

逆に不協和音の要素が多ければ濁った音色になります。電子楽器で作ったり出来る音ですが、協和音も混ぜないと非常に不快な響きに聴こえます。

波形画像

波形の例。比較的なだらかな空気の揺れ方。

・時間の影響

音色を作っているのは倍音だけではありません。空気の”揺らし方”でも違った音に聴こえます。つまり時間当たりの振動の仕方です。

ヴァイオリンに不慣れな人が弦と弓を力任せに擦り付ければ、何かが引っかかっているような不快な音が鳴ります。FAXの音も不快な音です。振動が滑らかではなく、声では真似出来ないような極端な反復の仕方をしているからです。

ピアノとギターでは倍音の成分が違いますが、発音の仕方は似ている楽器です。音量の減衰の仕方が似ているからです。

・ノイズ成分

音色の特徴は発音時や、音の持続中のノイズによっても大きく差が出ます。ピアノのハンマーの音やヴァイオリンの弓の摩擦音、ギターのピッキング音やフレットノイズ、人の声も息の音が個性になったりします。

あまりにノイズが多いと雑多で聴きづらい音楽になる恐れがあります。しかし完全なノイズレスもどこか味気なく聴こえてしまうような気がします。

・欲しい音のイメージ

この音を使えばこういうイメージの曲になる、というルールはありません。しかし普段耳にしているジャンルやアーティストによって、出てくる音の種類も似たような傾向だと感じるはずです。

自分自身が一つ一つの音のイメージを創り上げて、どういう情景が浮かぶのか、どういう心境になるのか、を意識してみるのも魅力的な音楽に出会えるきっかけになるかもしれません。