ビブラートの音楽的役割と練習法

音楽ではビブラートの有無が作品の良し悪しに影響する程です。

歌や演奏の技量を問われてしまう節もありますが、何よりも”音色の美しさ”を追求する事がビブラートを極める理由でしょう。

このページではビブラートの持つ音楽的な役割と練習方法を述べていきます。


・ビブラートの役割

鳴らしている楽器や声の音程を上下に揺らす事をビブラートと呼びます。

基本的には単音に使いますが、楽器によっては和音でも行えます。

音を揺らすと、

  • 同じ音程のままでも”時間的な動き”を作る事が出来る
  • アンサンブルの中では”瞬間的な協和音と不協和音の行き来”で目立って聴こえる
  • 楽器の持つ”鳴り”をよりノンビブラートの時よりも多く引き出せる

という効果が得られます。

もう少し要約すれば、”音に厚みを与える工夫”と言えます。

ジャンルや表現によってはビブラートをかけない方がいい場合もありますが、メロディーを際立たせやすいので無意識にかけてしまう人も多いです。

”ビブラートを含めて”の音色という考え方も出来るので、音作りの延長とも捉えて良いでしょう。

・ビブラートが出来る楽器

基本的には声や管楽器、弦楽器のように無段階で音程を変えられるならビブラートがかけられます。

しかし一部の古い鍵盤楽器も指の押さえ加減で音が揺らぐので可能です。

あまり現実的ではありませんが手で持てる楽器なら、音を鳴らしている間に楽器そのものを動かせばドップラー現象(音の発生源が移動して波の密度が変わる事)が起こり音程を揺らせます。

・ビブラートの種類

音程の動かし方を変えれば、ビブラートのパターンを増やせます。

ビブラートのイメージ例

上の図はビブラートのかけ方を簡単に表したものです。例として3つのパターンを表しています。

①はオーソドックスな動かし方です。揺らす速さを一定にすれば滑らかに聴こえます。

②は極端に速く音程を動かしたパターンです。あまりに間隔が長いとビブラートには聴こえません。

③は行きは速く戻りは遅い場合です。キーボードのベンドホイールを使うとこのような動き方になりやすいです。

どれも素早いテンポの中ならさほど違いはありませんが、意図的に表情を変える事で音色のバリエーションを増やす事ができます。

・ビブラートの練習法

ビブラートには主に2つのテクニックが必要となります。

  1. 狙った音程への的確なアプローチ
  2. 均一なリズムの維持

慣れないうちは揺らす事ばかりに意識が向いてしまいますが、この2つを別々に練習すれば意外と簡単に習得できるものだと気づけます。

・音程を毎回同じように狙う

ビブラートは一度揺らす音程を決めたら、それを変えずに繰り返すほうが綺麗に聴こえます。

1/4音や半音、1音や1音半など表現によって差をコントロール出来るようにしておくと良いでしょう。

どれだけゆっくりでもいいので、毎回同じ音程にシフトする為に音を覚える必要があります。

楽器によっては手の位置や力加減で覚えてしまうのも有効です。

・リズムを一定にする

音程と同時にリズムキープも綺麗なビブラートの条件です。

8分音符や16分音符、3連符や5連符と譜割りをしっかり意識した上で動かすのが上達への近道です。

曲のテンポに合わせて揺らす譜割りもコントロール出来ると心地良く聴こえます。

速度を上げていくにつれ音程のキープが難しくなってくるので、ガイドの音を鳴らして合わせたり録音したりして練習すると確実でしょう。

ただ音を揺らすだけでも、演奏者の個性が非常に強く反映されるのがビブラートです。

闇雲に使うのではなく、しっかり”音を聴く”のを忘れないようにして良い音色を探求しましょう。